世田谷相続専門税理士事務所

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相続税の非課税財産を理解して節税につなげよう!8つの例を紹介

■このような方にオススメ

  • 相続税の非課税財産にどのような種類があるのか知りたい方
  • 相続税法だけでなく措置法70条の非課税も詳しく知りたい方

 

■この記事のポイント 

  • 墓所、霊びょう、祭具の非課税は投資対象のものは適用対象外
  • 公共事業用の財産の非課税は共益事業に使っていなかったら取り消しがある
  • 心身障害者扶養共済制度に関する非課税は取得金額の全額が非課税
  • 生命保険金と退職手当金の非課税は500万円×法定相続人の数が非課税税
  • 措置法70の2つの非課税は、財産そのものor金銭、国等or特定公益信託の違い

 

こんにちは、世田谷相続専門税理士事務所です。

 

相続税の課税対象となる財産であっても、中には公益性の立場や社会政策的な見地、あるいは国民感情、その財産の性質から課税するのが適当でない財産もあります。 本記事ではそのような課税対象とすることが適切でない財産として、相続税法と租税特別措置法が規定している財産8つを取り上げて、それぞれの条文の趣旨から内容、具体例などを解説していきます。 

 

生命保険金等の非課税など、相続が発生したときに出くわすケースが多い財産もありますので、一度内容を確認してみてください。 相続税の非課税財産の概要から、その後に相続税法に規定する非課税、租税特別措置法に規定する非課税を順に解説していきます。

 

この記事の目次 

  • 相続で非課税となる財産の8つの概要
  • 相続税法の相続税の非課税財産6つ
    • その①:皇位とともに皇嗣が受けた物
    • その②:墓所、霊びょう、祭具など
    • その③:公益事業用の財産
    • その④:心身障害者扶養共済制度にもとづいて支給される給付金の受給権
    • その⑤:生命保険金等の非課税
    • その⑥:退職手当金等の非課税
  • 租税特別措置法の相続税の非課税財産2つ
    • その①:国等に相続財産を贈与した場合
    • その②:相続または遺贈により取得した金銭を特定公益信託に支出した場合
    • 生命保険金等を国等に贈与した場合は措法70の非課税を優先して適用する
  • まとめ

相続で非課税となる財産の8つの概要

 

本来条文の趣旨からいえば相続または遺贈により取得した財産で個人が取得したものであれば、相続税が課税されるべきです。しかし相続税の課税対象となる財産のなかには、そのルールで課税してしまうと、公益性や政策的な見地、あるいは国民感情の面から見てあまり好ましくない財産がでてきます。 

 

やはり租税法律主義ですから、そのような財産は相続税を課税しないものとして法律できちんと規定しなければなりません。それが相続税の非課税の規定です。 

 

相続税法では非課税の言い回しは「課税価格に算入しない」です(相続税法12)。贈与税の非課税でも同じ表現が用いられています(相続税法21の3)。

 

第十二条 次に掲げる財産の価額は、相続税の課税価格に算入しない。

相続税法12条柱書

相続税法で規定されている相続税の非課税財産には以下のものがあります(相続税法12)。

  • ①皇位とともに皇嗣が受けた物
  • ②墓所、霊びょう、祭具など
  • ③公益事業用の財産
  • ④心身障害者扶養共済制度にもとづいて支給される給付金の受給権
  • ⑤生命保険金等の非課税
  • ⑥退職手当金等の非課税

つぎに租税特別措置法で規定されている相続税の非課税には以下のものがあります(租税特別措置法70)。

  • ①国等に相続財産を贈与した場合
  • ②相続または遺贈により取得した金銭を特定公益信託に支出した場合

租税特別措置法で規定されている相続税の非課税は、措置法70条の非課税といわれます。

相続税法の相続税の非課税財産6つ

 

相続税法で規定されている相続税の非課税財産を個別に見ていきます。

 

その①:皇位とともに皇嗣が受けた物

一 皇室経済法(昭和二十二年法律第四号)第七条(皇位に伴う由緒ある物)の規定により皇位とともに皇嗣が受けた物

相続税法12①一

まず皇室経済法の規定により皇位とともに皇嗣が受けた物です(皇室経済法7)。いわゆる三種の神器です。非常に特殊な財産ですね。天皇陛下がお亡くなりになって、つぎの天皇陛下に皇位を継ぐとき皇位の証として三種の神器を渡しますよね。 

 

三種の神器は草薙剣(くさなぎのつるぎ)、八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)、八咫鏡(やたのかがみ)です。そのほかの皇位とともに皇嗣が受けた物には、宮中三殿の賢所(かしこどころ)、皇霊殿(こうれいでん)、神殿(しんでん)も該当してきます。

(参照元:ご即位・立太子・成年に関する用語 - 宮内庁) 

 

これらの財産に相続税が課税されるといっても財産の評価すらもなかなか難しいですよね。時価がそもそもいくらなのかわかりません。やはり憲法にもとづいた特殊な地位の承継に伴うもので、私的なものでいつでも処分できる財産と同じようには考えられないのが理由です。 

 

天皇が亡くなったときに出てくる財産なので、贈与税の非課税の規定はなく、相続税の非課税しか規定されていません。では平成天皇の生前退位が話題になったとき、贈与税は課されたのでしょうか。明治憲法以来、天皇の生前退位を想定していなかったので、贈与税の非課税の規定は設けられていない事情がありました。 

 

このときも贈与税は課されていません。皇室典範特例法のなかであらたに贈与税の非課税の規定が定められたことで対応がなされました。したがって現行の相続税法でも「皇位とともに皇嗣が受けた物」は相続税の非課税のみとなっています。

 

その②:墓所、霊びょう、祭具など

二 墓所、霊びよう※1及び祭具並びにこれらに準ずるもの※2

相続税法12①二

2つ目は墓所、霊びょう、祭具並びにこれらに準ずるものです。祖先祭祀など祖先崇拝の慣行を尊重し、日常礼拝の用に供しているものを課税することへの国民感情を考慮して、相続税は非課税とされています。 

 

※1墓所、霊びょうは墓地や墓石、おたまやのようなもののほかに、これらの尊厳の維持に必要な土地などを含みます(相続税法基本通達12-1)。 

 

※2これらに準ずるものとは、庭内神し、神たな、神体、神具、仏壇、位はい、仏像、仏具、古墳などで日常礼拝の用に供しているものをいいます(相続税法基本通達12-2)。庭内神しは広い庭のなかにある祠(ほこら)ですね。 

 

このような性質をもつ財産は相続税の課税価格に算入しないことになっています。ただし日常礼拝の目的としてではなく商品や骨とう品、投資の対象として所有するもの、たとえば金の仏像などは非課税の対象外です(相続税法基本通達12-2)。

 

その③:公益事業用の財産

三 宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業を行う者※1で政令で定めるものが相続又は遺贈により取得した財産※2で当該公益を目的とする事業の用に供することが確実なもの※3

相続税法12①三

たとえば宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業を行っている個人の方がいたとします。個人ですので相続または遺贈によって財産を取得することがあります。父から土地建物を相続した場合に、自分が公益を目的として行う事業に使おうとしたときに、その財産に相続税をかけてしまうと公益の事業の効果が薄まってしまいますね。 

 

現金で考えるとよりわかりやすいかもしれません。現金1億円を相続して、その1億円をまるまる公益を目的とする事業に使おうと考えていたのに、税金が3000万円取られてしまったら、事業に残額7000万円しか投入できなくなります。公益を目的とする事業の効果を薄めないために相続税を課さないとしています。 

 

※1「宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業を行う者」は、その人自身が公益を目的とする事業を行っていることです。人の要件です。事業を行う者には、個人だけでなく人格のない社団等を含みます。人格のない社団等が財産を引き続いた場合も、一定の要件を満たす場合は相続税が課税されません。 

 

ただ持分の定めのない法人は、みなし個人になる可能性もありますが、事業を行う者に含まれません。そもそも持分の定めのない法人は原則、相続税が課税されませんでしたよね。 

 

税額が不当に減少するときにはじめて、納税義務者としてみなし個人として扱われます。課税されていること自体がとんでもないケースになっているので、このなかに入ってくる余地はないとの発想です。あくまでここでいう事業を行う者は、個人か人格のない社団等のみです。 

 

※2取得原因は「相続又は遺贈により取得した財産」です。実は贈与税の非課税もあります。贈与税の非課税のときは「贈与に取得した財産」です(相続税法21の3①三)。 

 

※3「公益を目的とする事業の用に供することが確実なもの」は、モノの要件です。相続または遺贈により取得した財産が公益に使われるのが確実であることです。非課税財産が個人の私的利用にならないように要件が定められています。 

 

この規定は相続開始時点でその要件を満たしていても、その後、経過観察されます。取り消しの話です。

2 前項第三号に掲げる財産を取得した者がその財産を取得した日から二年を経過した日において、なお当該財産を当該公益を目的とする事業の用に供していない場合においては、当該財産の価額は、課税価格に算入する。

相続税法12②

財産を取得した人がその財産を取得した日から2年を経過した日に、その財産を公益を目的とする事業に使っていない場合は、その財産は取得時の時価で相続税の課税価格に算入するとされます。 

 

つまり財産を公益を目的とする事業に使うといっておきながら、実際に使っていなかったら非課税が取り消されるのです。その財産は相続税の課税価格に算入されるので、修正申告が行われることになります。 

 

そのチェックが入るのは「その財産を取得した日から2年を経過した日」です。「取得した日から2年を経過した日」は応当日です。たとえば☓1年5月3日が取得日であったら、2年後の応当日☓3年5月3日が「取得した日から2年を経過した日」になります。 

 

この時点で見るので、たとえば財産の取得日から1年と半年程度のときに、財産を公益を目的とする事業の用に供していなくても問題はありません。しかし2年を経過した日時点では、ピンポイントでこの日にチェックしたら、公益事業用に使っている必要があります。モノの要件をきちんと満たしてなければなりません。 

 

要件が満たされてなければ、このときに課税価格に参入しないことが取り消され、財産を取得したときの時価で課税価格に参入さることになります(相続税法基本通達12-7)。

 

その④:心身障害者扶養共済制度にもとづいて支給される給付金の受給権

四 条例の規定により地方公共団体が精神又は身体に障害のある者に関して実施する共済制度で政令で定めるものに基づいて支給される給付金を受ける権利

相続税法12①四

心身障害者扶養共済制度にもとづいて支給される給付金の受給権です。心身障害者共済制度は保険制度と思ってください。心身が不自由な方を扶養するための受給権であることを考慮して相続税は課税されません。

 

心身障害者共済制度はどのような制度でしょうか。たとえば自分の子どもが心身の不自由な状態で将来が心配なときに、自分が死亡してしまったり、あるいは働けないような重度な障害を持ってしまったりした場合に、子どもの生活がどうなるのか考えますよね。 

 

そういった方のために地方公共団体は、心身障害者共済制度を設けています。①扶養義務者の加入者が地方公共団体に掛金を入れておいて、②もし加入者が亡くなったり重度の障害を持ったりしてしまった場合、③地方公共団体から心身が不自由な受取人に年金が支払われる制度です。 

 

地方公共団体から年金を受け取るので、遺産でもなんでもなく、民法上の本来の相続財産ではありません。やはり保険なので、相続税法3条①一の生命保険金等のみなし相続財産の規定が適用されます。受取人が加入者から相続または遺贈により取得した財産とみなされる財産の一つです。 

 

ただしそこで課税してしまうと、地方公共団体がわざわざ心身の不自由な方が将来、安心して生活ができるように考えて作った制度なのに、その効果が薄れてしまいます。制度の趣旨から離れてしまいますよね。そのため地方公共団体から心身が不自由な方に納付される受給権には、相続税が課税されません。生命保険金等の非課税の法定相続人1人 当たり500万円と違って全額が非課税です。

 

その⑤:生命保険金等の非課税

 

被相続人が保険料を負担していた生命保険で、被相続人の死亡により保険事故が発生して、保険金が受取人に振り込まれた場合、その保険金は本来の相続財産とは呼べません。被相続人の遺産から払われたものではなく、保険会社が払ったものであるので、民法上の本来の相続財産にはなりません。 

 

しかし被相続人が保険料を負担していた事実もあるので、相続または遺贈により受取人が、生命保険金を取得したものとしてみなして課税が行われます(相続税法3①一)。課税公平の見地からこのような規定が設けられています。 

 

生命保険金には500万円×法定相続人の数の非課税枠があります。対象者は相続人のみです。みなし相続財産は相続人以外の人が保険金を受け取ってもなりますが、非課税が適用されるのは相続人のみです。 

 

たとえば相続人の取得した生命保険が1000万円とします。法定相続人が2人の場合、非課税枠は500万円×法定相続人の数2人=1000万円となりますね。生命保険金1000万円は非課税1000万円の枠内に収まるので、相続税は課税されないことになります。

 

生命保険等の非課税は別記事で詳しく説明しますのでそちらを参照ください。

その⑥:退職手当金等の非課税

 

退職金は会社からもらうのであって、被相続人から承継する性質をもつものではないので、民法上の相続財産にはあたりません。ただし退職金をもらう原因は被相続人の勤労の貢献によるものであるので、遺産と変らないと考えられることを考慮して、親族が受け取る退職金は相続または遺贈により取得したものみなして相続税を課税します(相続税法3①二)。 

 

退職手当金等の非課税は生命保険金等の非課税の内容と変わりません。非課税枠は500万円×法定相続人の数です。対象者も相続人のみです。計算方法も生命保険金等の非課税の内容と変わりません。 

 

退職手当金等の非課税は下記の記事でくわしく説明しますのでそちらを参照ください。

租税特別措置法の相続税の非課税財産2つ

 

租税特別措置法で規定する相続税の非課税財産の以下2つを紹介します。

  • ①国等に相続財産を贈与した場合
  • ②相続または遺贈により取得した金銭を特定公益信託に支出した場合

その①:国等に相続財産を贈与した場合

第七十条 相続又は遺贈により財産を取得した者※1が、当該取得した財産※2をその取得後当該相続又は遺贈に係る相続税法第二十七条第一項又は第二十九条第一項の規定による申告書(これらの申告書の提出後において同法第四条第一項又は第二項に規定する事由が生じたことにより取得した財産については、当該取得に係る同法第三十一条第二項の規定による申告書)の提出期限※3までに国若しくは地方公共団体又は公益社団法人若しくは公益財団法人その他の公益を目的とする事業を行う法人のうち、教育若しくは科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与するもの※4として政令で定めるものに贈与をした場合※5には、当該贈与により当該贈与をした者又はその親族その他これらの者と同法第六十四条第一項に規定する特別の関係がある者の相続税又は贈与税の負担が不当に減少する結果となると認められる場合※6を除き、当該贈与をした財産の価額は、当該相続又は遺贈に係る相続税の課税価格の計算の基礎に算入しない。

租税特別措置法70①

租税特別措置法に規定する国等に相続財産を贈与した場合の非課税です。措法70の非課税と呼ばれます。まず被相続人を父とし、①相続または遺贈により財産を受け取った人が子どもとします。②その子どもが父からもらった財産を相続税の申告期限までに③国や地方公共団体、公益社団法人などに、その財産そのものを④贈与した場合、その財産は相続税の課税価格の基礎に参入しません。 

 

措置法では「課税価格の基礎に算入しない」の文言ですが、法人税法の「課税価格に参入しない」と同じ意味だと思ってください。 

 

子どもが父から相続または遺贈により取得した財産をどこかに寄付するのは、もともと父が生前から遺産を寄付してほしいといっていたりするからとも考えられ、父の意図を汲んで贈与することが日本人のなかに多いことを考慮して非課税とされています。 

 

※1「相続又は遺贈により財産を取得した者」が対象者ですので、贈与で取得した人ではダメです。 

 

※2取得した財産は、取得した財産そのものでなければなりませんので、たとえば土地を譲渡した後のお金を寄付したケースでは認められません。

 

相続または遺贈により取得した財産なので、みなし財産は使えるのか使えないかの論点がありますが、これはOKです。生命保険金等や退職手当金等で取得したお金をそのまま贈与しても措法70の適用対象となります。 

 

取得した家屋などが焼けてしまって保険金が入ってきたお金を贈与した場合は、換金後の贈与に近いですが、あくまで不可抗力ですので措法70の適用がありとされています。

(参照元:措通70-1-6(2)

 

※3期限は相続税の期限内申告書の提出期限までです。つまり相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内です。10ヶ月後の応当日だと思ってください。たとえば相続開始をしった日が4月20日であったら、申告期限は翌年の2月20日の応当日になると考えてください。申告することが非課税を適用する要件となっています(租税特別措置法70⑤)。

 

※4相手先の要件は国や地方公共団体、公益社団法人、公益財団法人、認定NPO(民間非営利団体)などです。認定NPOは租税特別措置法70⑥から。ただし宗教法人や医療法人、寄付行為により設立される公益法人などを相手先とする贈与は措法70の適用の対象外となります。

 

※5贈与した場合は、その財産そのものを贈与したときです。なお設立のための贈与はダメですよ。たとえば国や地方公共団体を設立するケースはないので、公益社団法人や公益財財団法人、認定NPO法人などの設立する場合を想定しています。

 

設立後の法人で相手先として存在していればいいのですが、設立のためだと相手先はまだ存在していなくて、公益社団法人や認定NPOなどでもないので、相手先の要件を満たさないからです。したがって設立のための贈与は認められません。

 

※6ただこの贈与が親族やそのほかこれらの人と、特別の関係がある人の税額を不当に減少することになる場合は適用除外となります。 

 

<非課税の取り消し>

相続税法の公益事業用財産の非課税と同様に、非課税の取り消しがあります。

2 前項に規定する政令で定める法人で同項の贈与を受けたものが、当該贈与があつた日から二年を経過した日までに同項に規定する政令で定める法人に該当しないこととなつた場合※1又は当該贈与により取得した財産を同日においてなおその公益を目的とする事業の用に供していない場合※2には、同項の規定にかかわらず、当該財産の価額は、当該相続又は遺贈に係る相続税の課税価格の計算の基礎に算入する。

租税特別措置法70②

2つ要件があります。相続税法の公益事業用財産の非課税は、財産が2年を経過した日に公益事業の用に供していない(※2)だけですが、措法70の場合はその2年を経過した時点で、特定の公益法人に該当しないこととなった場合(※1)も要件に加わります。 

 

※1は特定の公益法人に該当しない場合なので、国や地方公共団体への贈与では関係のない規定です。特定の公益社団法人や公益財団法人などに贈与したケースで、当初は特定の公益法人に該当していたけど、その後に認定が取り消された場合は、措法70条の非課税は取り消しになります。 

 

※2贈与により取得した財産を2年経過したときに、公益を目的とする事業の用に供していない場合も非課税の取り消しになりますよ。 

 

本規定は少しハードルが高い規定ではあります。相続または遺贈により財産を取得した適用対象者の本人の行為によるところではなく、財産を渡した先の特定の公益法人に該当しないこととなったとのトラブルで、非課税が取り消されるので非常に可哀想な状況ではあります。

 

その②:相続または遺贈により取得した金銭を特定公益信託に支出した場合

3 相続又は遺贈により財産を取得した者が、当該取得した財産に属する金銭を第一項に規定する申告書の提出期限までに特定公益信託(公益信託ニ関スル法律(大正十一年法律第六十二号)第一条に規定する公益信託で信託の終了の時における信託財産がその信託財産に係る信託の委託者に帰属しないこと及びその信託事務の実施につき政令で定める要件を満たすものであることについて政令で定めるところにより証明がされたものをいう。次項において同じ。)のうち、その目的が教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与するものとして政令で定めるものの信託財産とするために支出した場合には、当該支出により当該支出をした者又はその親族その他これらの者と相続税法第六十四条第一項に規定する特別の関係がある者の相続税又は贈与税の負担が不当に減少する結果となると認められる場合を除き、当該金銭の額は、当該相続又は遺贈に係る相続税の課税価格の計算の基礎に算入しない。

租税特別措置法70③

上記の「国等に相続財産を贈与した場合」と同じ立て付けで、金銭に関して措置法70の規定があります。用途が公益に決まっている信託の特定公益信託に金銭を支出した場合にも、同様に措法70の課税が使えるというものです。 

 

①相続または遺贈により金銭を取得した人が②相続税の申告期限までに、③特定公益信託に対して④金銭を支出した場合、⑤措法70の非課税が適用されます。ただし現物の贈与と同様に、親族その他これらと特別の関係がある人の税負担が不当に減少する結果となる場合は適用ありません。 

 

ここで特定公益信託とは何か。信託終了時にその残余財産が委託者に帰属しないこと。誰かに帰属してしまうと公益の器ではなくなってしまうからですね。また公益信託が合意により終了できないものであること。信託財産は金銭に限定されているものであること。主務大臣の証明を受けたことなどが定義されています(租税特別措置法施行令40の4①②)。 

 

基本的には措置法70の「国等に相続財産を贈与した場合の非課税」の財産が金銭になって、相手が国等から特定公益信託になったと考えるだけで問題ありません。 

 

<非課税の取り消し>

その受け入れの日から2年を経過した日までに特定公益信託に該当しないこととなった場合は、課税価格の計算の基礎に算入します(措置法70④)。つまり非課税の取り消しです。 

 

現物であればその財産を公益の事業の用に供しているかどうかの論点が出てきます。しかしこの場合は金銭なので、金銭だったらいろいろな形になってしまいますので、事業の用に供しているかどうかの論点は出てきません。一つしか取り消し事由はありません。 

 

ただこの特定公益信託が2年後に該当しないこととなってしまったら、相続または遺贈により財産を取得して金銭を支出した人が悪いわけではないのですが、非課税の取り消しになってしまいます。

 

生命保険金等を国等に贈与した場合は措法70の非課税を優先して適用する

 

相続人等が取得した保険金等の一部を相続税の申告期限までに国等に贈与した場合、つまり措法70の非課税の適用がある場合に、生命保険金等の非課税(相続税法12)と措法70の非課税の双方が適用されます。租税特別措置法の非課税を生命保険金等の非課税より優先適用し、適用後の残額に生命保険金等の非課税を適用させます。なぜなら措置法は特別法なので優先適用されるからです。 

 

たとえば相続人が取得した生命保険金を4000万円のうち1000万円を相続税の申告期限までに国に贈与したとします。この場合、まず1000万円は措置法70が優先適用されて非課税となります。つぎに4000万円から1000万円を引いた3000万円を取得した保険金と考えて生命保険金等の非課税を適用していきます。

 

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