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こんにちは世田谷相続専門税理士事務所です。
本記事では特定の評価会社のなかでも「土地保有特定会社」を取り上げてお伝えします。土地保有特定会社とは、資産の多くが土地等である会社が該当してきます。たとえば不動産会社で販売用の土地を多く所有する会社や、不動産賃貸会社で賃貸用の土地を多く所有するような会社、節税目的で作られた会社などが土地保有特定会社に当たります。
土地保有特定会社は、通常の事業活動を行っている一般的な会社と比べて、資産の保有状況が著しく異なります。一般の評価会社に適用する原則的な評価方式により株式を評価するのは合理的とはいえません。評価会社が所有する資産の価値に着目した評価方式の純資産価額方式により評価します。
土地保有特定会社は土地保有割合(総資産価額に占める土地等の価額、相続税評価ベース)が大会社70%以上、中会社90%以上の会社をいいます。
小会社でも総資産価額(帳簿価額)が大会社の基準あるいは中会社の基準にある場合、土地保有特定会社に当たる場合があります。それ以外の小会社は土地保有特定会社の対象外です。土地保有特定会社の判定は必要ありません。
土地保有特定会社に該当する会社の株式は、原則として1株当たりの純資産価額(相続税評価額)により評価します。
これらの内容を本記事では、大きく以下の流れでお伝えします。
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では解説していきます。
この記事の目次 [非表示]
土地保有特定会社とは
上記の定義を表にしたものが以下のとおりです。
土地保有特定会社かの判定は、評価会社の課税時期における相続税評価額ベースの土地保有割合(総資産価額に対する土地等の価額の割合)により行います。上表に定める土地保有割合が一定割合以上の会社を土地保有特定会社と判定します。
評価会社が大会社の場合、業種・総資産価額を問わず土地保有割合(相続税評価額ベース)が70%以上の会社が土地保有特定会社の対象です。
評価会社が中会社の場合、業種・総資産価額を問わず土地保有割合(相続税評価額ベース)が90%以上の会社が土地保有特定会社となります。
一方で評価会社が小会社の場合は、つぎの区分に該当する会社を除いて土地保有特定会社の対象となりません。
大会社の規模にある会社
中会社の規模にある会社
上記の区分にある総資産価額の大きな会社、つまり小規模のなかでも大会社の基準あるいは中会社の基準にある会社は、土地保有特定会社の判定対象となってきます。
上記以外の小会社は土地保有特定会社の判定は不要となり、土地保有特定会社の対象外です。
小会社ではなぜこのような取り扱いなのか。土地保有会社は純資産価額方式に株式を評価するのが原則です。また小会社も以下のとおり原則は純資産価額方式により株式を評価します。
小会社は、土地保有特定会社と同じ株式の評価方式であるため土地保有特定会社の範囲から除いています。ただし小会社の評価方法は、類似業種比準価額方式と純資産価額方式の併用方式も選択できます。
総資産価額が大会社あるいは中会社の規模にある小会社の株式を、一部、類似業種比準価額方式の価額を含む併用方式により評価することは適切でないと考えられています。そのため小会社のうち会社規模の大きなものは土地保有特定会社の判定対象とされています。
土地保有特定会社の判定における留意点を挙げていきます。
土地保有特定会社の判定の基礎となる土地等とはつぎのものをいいます。
土地・・・宅地、田、畑、山林、原野、雑種地等
土地の上に存する権利・・・借地権、定期借地権、賃借権、地上権、永小作権等
土地保有特定会社の判定の基礎となる土地等は、所有目的や所有期間を問いません。評価会社が所有しているすべてのものを含みます。
したがって評価会社が建売分譲業者で販売目的の棚卸資産として所有する土地等も、土地保有特定会社の判定の基礎となる土地等に含まれます。賃貸事業の目的あるいは自社使用の目的で所有する土地等に限られません。
借地権や賃借権などの土地の上に存する権利も、土地保有割合の算定で土地等の価額に含められます。たとえばコインパーキングとして賃借りしている土地も土地等に含まれます。
[不動産販売会社がたな卸資産として所有する土地等の取扱い|国税庁]
課税時期前に合理的な理由もなく評価会社の資産構成に変動があり、その変動が土地保有特定会社に該当する評価会社と判定されることを免れるためのものと認められるときは、その変動はなかったものとして、土地保有特定会社の判定します。
たとえば課税時期前に金融機関から多額の借り入れし、定期預金にすることにより土地保有割合を引き下げたとします。その借り入れが、土地等保有特定会社に該当することを免れるためのものであるときは、その変動はなかったものとして、土地等保有特定会社に該当するかどうかの判定を行います。
国税庁 評価通達189なお書 [特定の評価会社の株式]
(純資産価額方式)
純資産価額方式は、原則として評価会社が課税時期に仮決算を行い、確定した資産・負債の金額にもとづいて1株当たり純資産価額を計算します(仮決算方式)。
しかし特例として課税時期の直前期末を基準に評価することも認められています(前期末基準)。条件は直前期末から課税時期までの間に資産・負債の金額について著しい増減がないこと。評価額の計算に与える影響が少ないと認められることです。
評価会社が事業活動を行うなか、事業年度の途中の課税時期に仮決算を行うことは、会社に大きな負担ですからね。
たとえば令和3年7月15日に被相続人の相続が発生し、3月決算の会社の株式を取得したとします。課税時期令和3年7月15日の直前期末の令和3年3月31日時点の資産・負債の金額にもとづいて、1株当たり純資産価額を計算できます。
(土地保有特定会社の判定・株式評価にも適用)
この規定は、土地保有特定会社の判定における「総資産価額(相続税評価額)」などについても同じように取り扱われます。土地保有特定会社に該当するかどうかの判定における総資産価額の計算時点と、後述する1株当たり純資産価額(相続税評価額ベース)の計算時点は同じとされます。
(純資産価額方式)
非上場株式を純資産価額方式により評価する場合、土地等の価額は原則、財産評価基本通達の定めにより評価します。ただし例外として評価会社が課税時期前3年以内に取得した土地等は、「通常の取引価額」に相当する金額により評価します。
土地等の不動産の通常の取引価額と相続税評価額との乖離を利用して、不当に税負担を回避することを防止するためですね。
たとえば評価会社が相続開始前2年前に賃貸マンションを購入した場合、その敷地は課税時期前3年以内に取得した土地等ですので、財産評価基本通達の定めによる路線価方式で評価しません。通常の取引価額に相当する金額により評価することとなります。
なお土地等の帳簿価額が、課税時期の「通常の取引価額」に相当する金額と認められる場合、土地等はその帳簿価額に相当する金額によって評価できます。
(土地保有特定会社の判定・株式評価にも適用)
この規定は、土地保有割合を計算する場合の「純資産価額(相続税評価額ベース)」と「土地等(相続税評価額ベース)の計算に当たっても、上記の規定が適用されます。また後述する土地保有特定会社に該当する場合の株式の評価でも、同じくこの規定が適用されます。
(純資産価額方式)
評価会社が他の非上場株式を有している場合、その株式を純資産価額方式で評価する場合、評価差額に対する法人税等相当額を控除(37%控除)できません。
子会社を設立して資産の移転を図り、評価差額に対する法人税等相当額の控除を利用して恣意的に評価会社の株式の評価額を引き下げることを防止するためですね。
(土地保有特定会社の判定・株式評価にも適用)
この規定は、土地保有特定会社を判定する場合における「総資産価額(相続税評価額ベース)」と「土地等の価額(相続税評価額ベース)」の計算に当たっても適用されます。つぎの項目の土地保有特定会社に該当する場合の1株当たり純資産価額を計算する場合も同様です。
財評通186-3 [評価会社が有する株式等の純資産価額の計算]
つぎに土地保有特定会社と判定された場合の株式の評価方法を確認します。
土地保有特定会社と判定された場合の株式の評価方法を確認しましょう。
土地保有特定会社の株式の価額は、原則として1株当たりの純資産価額(相続税評価額)により評価します。
なお株式取得者の属する株主グループの議決権割合が50%以下の場合、「1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)」から20%減額した価額を評価額とします。たとえば1株当たり純資産価額が1,000円であれば、その価額を20%減額した800円で評価できます。
ただし株式の評価方法の判定において、特例的評価方式の配当還元方式により評価できるとされた株主は、配当還元方式により評価できます。
国税庁 財基通189-4 [土地保有特定会社の株式又は開業後3年未満の会社等の株式の評価]
土地保有特定会社は土地が総資産の大部分を占める会社であり、一般の上場会社の資産構成とは大きく異なります。上場会社に準ずる会社として、上場会社の株価に批准して株式の評価額を求める類似業種比準価額方式を、株価の評価に適用するのは合理的ではありません。
土地保有特定会社の株式は、評価会社が所有する資産の価値に着目した評価方法である純資産価額方式により評価することとされています。
土地保有特定会社の株式の評価方法を具体的な数値で確認していきましょう。
<前提条件>
評価会社は大会社です。大会社の場合、業種・総資産価額を問わず土地保有割合(相続税評価額ベース)が70%以上の会社が土地保有特定会社の対象です。
土地等3,000百万円/総資産価額(相続税評価額)4,000百万円 = 75%≧70% ∴土地保有特定会社に該当
本ケースでは土地保有割合が75%と70%以上のため、評価会社は土地保有特定会社に該当します。
土地保有特定会社に該当しますので、1株当たりの純資産価額(相続税評価額)により株式を評価します。
① 相続税評価額による純資産価額 :3,500百万円
② 帳簿価額による純資産価額:2,300百万円
③ 法人税等相当額 (①ー②)✕37%=444百万円
④ 1株当たり純資産価額 (①ー③)/1,000,000株=3,056円
⑤ 株式取得者と同族関係者の議決権割合50%以下 3,056円✕80/100=2,444円
純資産価額方式は、まず相続税評価額による純資産価額から「含み益✕37%」の金額を控除して評価会社の純資産価額を計算します。含み益は相続税評価額ベースの純資産価額と帳簿価額ベースの純資産価額との差額です。その純資産額を評価会社の発行する議決権のある株式数で割ることにより1株当たり純資産価額を求めます。
純資産価額方式は、会社を清算したときにいくらの価値があるのか算定し株価を評価する方法です。含み益のある会社を売った場合、含み益に対して法人税等が課税されます。その分、精算された後の手取りの収入が減ります。そのため純資産価額から法人税相当額を控除した上で、1株当たり純資産価額を計算します。
前提条件をもとに計算した1株当たり純資産価額は3,056円です。株式取得者と同族関係者の議決権割合が40%と50%以下のため、3,056円に80/100の割合を乗じた金額の2,444円を評価額とします。
つぎは株価引き下げ対策としての「土地特外し」と呼ばれるものの紹介です。
土地保有特定会社に該当する会社を、土地保有割合を引き下げることにより土地保有特定会社に該当しないようにすることを「土地特外し」といいます。
評価会社が土地保有特定会社に該当すると、株式を純資産価額方式により評価しなければなりません。一般の評価会社であれば、類似業種比準価額方式を株式評価に適用できた会社も同様です。
一般的に、純資産価額方式により株式を評価した価額よりも類似業種比準価額方式により計算した価額の方が有利です。土地保有特定会社に該当すると純資産価額方式により株式を評価しなければならず不利となるのですね。
そこで土地保有特定会社に該当しないように「土地特外し」を検討します。
土地保有特定会社に該当する会社を、土地保有割合(相続税評価額ベース)を引き下げることにより、土地保有特定会社に該当しないようにします。土地保有割合の判定式は、「(分子)土地等/(分母)総資産価額」です。分子の土地等の金額を減らすか、分母の総資産価額を増やすかの対応が考えられます。
たとえば法人が所有している遊休地に、借り入れをして建物を建てることも土地保有割合の引き下げに有効でしょう。分子の土地等の金額は変わりませんが、分母の総資産価額は建物の金額が増えますので、土地保有割合は下がりますね。
つぎの項目では土地特外しの一例を紹介します。
土地保有特定会社を解消する具体的なケースをお伝えします。
すでにお伝えした土地保有割合を引き下げるケースではありません。土地保有特定会社の判定が必要だった小会社を、資産組替えで総資産価額を減らすことにより判定を不要とする方法です。小会社で土地保有特定会社の判定は不要となった場合は、土地保有特定会社の対象外です。
<前提条件>
資産組替え前の評価会社の資産構成は以下のとおりです。
小会社ですが、総資産価額(帳簿価額)が大きいため、中会社の基準に該当する小会社として土地保有特定会社の判定が必要です。現状の総資産価額(帳簿価額)は7,000万円であり、判定が必要な基準の「その他の業種 5,000万円以上15億円未満」の範囲にありますね。
{(土地A40+土地B150)/総資産価額210} = 90% ≧ 90% ∴土地保有特定会社に該当
土地保有割合は90%であり、土地保有特定会社に該当する90%以上です。評価会社は土地保有特定会社に該当します。
土地保有特定会社の株式評価は、原則として1株当たりの純資産価額(相続税評価額)です。評価会社の株式を評価した結果、以下のとおり1株当たり「11,820円」となりました。
① 相続税評価額による純資産価額 :170百万円
② 帳簿価額による純資産価額:30百万円
③ 法人税等相当額: (①ー②)✕37%=51.8百万円
④ 1株当たり純資産価額: (①ー③)/10,000株=11,820円
ここで土地保有特定会社の判定が不要となるまで資産組替により総資産価額を減らします。現状の総資産価額7,000万円のため、5,000万円未満までの2,000万円超を減らす必要があります。
以下の対策を実行します。
対策により総資産価額は2,500万円減ります。なお現預金は15百万(=土地A10百万円△退職金25百万円)純減です。
対策実行後、総資産価額(帳簿価額)は4,500万円です。土地保有特定会社の判定が必要な基準の「その他の業種 5,000万円以上15億円未満」を総資産価額が下回るため、土地保有特定会社の判定は不要となりました。
評価会社の土地保有割合は97%と90%以上であるものの、土地保有特定会社に該当しないケースですね。小会社の株式を原則的評価方式により評価すると下記のとおり「5,452円」です。
① 相続税評価額による純資産価額 :115百万円
② 帳簿価額による純資産価額:5百万円
③ 法人税等相当額: (①ー②)✕37%=40.7百万円
④ 1株当たり純資産価額: (①ー③)/10,000株=7,430円
⑤ 1株当たり類似業種比準価額: 3,474円と仮定
⑥(類3,474円✕0.5)+(純7,430円✕0.5)=5,452円 < ④ 7,430円 ∴ 5,452円
土地特外しを実行したところ、株価は実行前の「11,820円」から実行後の「5,452円」まで引き下げられる結果となりました。
以上、資産組替えによる「土地特外し」の事例を見てきました。しかしあくまで事業遂行上の理由があって行われるべきものです。土地保有特定会社に該当することを回避するために土地保有割合を引き下げるのは、避けるべきです。
前述のとおり課税時期前に合理的な理由もなく評価会社の資産構成に変動があり、その変動が土地保有特定会社と判定されることを免れるためのと認められる場合には否認されます。
土地保有特定会社は、土地保有割合(総資産価額に占める土地等の価額、相続税評価ベース)が、大会社は70%以上、中会社は90%以上の会社です。
小会社は総資産価額(帳簿価額)が、大会社の基準に該当する会社は70%以上、中会社の基準に該当する会社は90%以上でした。それ以外の小会社は土地保有特定会社の対象外でしたね。
土地保有特定会社に該当する場合の株式の評価は、純資産価額方式が原則です。土地保有特定会社の株式評価が必要となったときは、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
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