世田谷相続専門税理士事務所

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小規模宅地における限度面積要件のポイントと8つの具体例

限度面積要件

こんにちは、世田谷相続専門税理士事務所です。

 

小規模宅地の特例制度では、「小規模」という名前が示す通り、特例の適用が可能な面積に制限があります。これを「限度面積要件」と呼びます。

特例を適用できる複数の宅地がある場合、どの宅地に特例を適用するかは納税者自身が選択することになります。限度面積要件を満たしながら、税金的に最も有利な選択をするためには、正確な計算方法をしっかりと理解することが重要です。

この記事では、限度面積要件の計算方法を分かりやすく解説していきます。

 

この記事の目次

  • 限度面積要件の概要
    ①特定事業用等宅地等
    ②特定居住用宅地等
    ③貸付事業用宅地等
    限度面積要件~完全併用と限定併用~
    完全併用
    完全併用の具体例2つ
    限定併用
    限定併用の具体例2つ
    選択特例対象宅地等が複数ある場合の有利判定
    ステップ①:単価あたりの減額金額の算定
    ステップ②:完全併用と限定併用の有利判定
    有利判定の具体例4つ
    共有の場合の選択できる限度面積

限度面積要件の概要

 

要件

 

限度面積要件は、以下の3種類の「選択特例対象宅地等」ごとに定められています。

 

  1. 特定事業用等宅地等:特定事業用宅地等または特定同族会社事業用宅地等
  2. 特定居住用宅地等
  3. 貸付事業用宅地等

 

「選択特例対象宅地等」とは、「特例対象宅地等」の中から、相続人等が小規模宅地等の特例を受けるために選択した宅地のことを指します。

 

一方、「特例対象宅地等」とは、小規模宅地等の特例の対象となる宅地のことであり、相続人等が相続等により取得した宅地のうち、相続開始直前に被相続人等の事業または居住の用に供されていた宅地で、一定の要件に該当するものを指します。

 

①特定事業用等宅地等

 
選択特定対象宅地等が特定事業用「等」宅地等の場合は、その選択特例対象宅地等の面積の合計が「400㎡」以下であること。
 
特定事業用「等」宅地等とは、個人版の特定事業用宅地等と法人版の特定同族会社事業用宅地等のことをいいます。特定事業用宅地等と特定同族会社事業用宅地等の面積を合計して400㎡までが限度面積です。
 

②特定居住用宅地等

 
選択特定対象宅地等が特定居住用宅地等の場合は、その選択特例対象宅地等の面積の合計が「330㎡」以下であること。
 

③貸付事業用宅地等 

 
選択特定対象宅地等が貸付事業用宅地等の場合、以下の2ケースに区分されます。
  • ケース①:選択特例対象宅地等のすべてが貸付事業用宅地等である場合
  • ケース②:選択特例対象宅地等に貸付事業用宅地等のほかに、特定事業用等宅地等や特定居住用宅地等がある場合

ケース①:選択特例対象宅地等のすべてが貸付事業用宅地等である場合

選択特例特定対象宅地等のすべてが貸付事業用宅地等の場合、その選択特例対象宅地等の面積の合計が「200㎡」以下であること。
 

ケース②:選択特例対象宅地等に貸付事業用宅地等のほかに、特定事業用等宅地等・特定居住用宅地等がある場合

選択特例対象宅地等に貸付事業用宅地等のほかに、特定事業用等宅地等や特定居住用宅地等がある場合は、以下の算式とおり限度面積の調整計算が必要になってきます。
調整計算
算式は、選択特例対象宅地等のすべてを貸付事業用宅地等の限度面積200㎡ベースに置き直した上で、換算後の面積の合計が200㎡以下であることを要件であると意味しています。
 
特例事業用等宅地等の限度面積は400㎡なので面積に200/400を乗じて200㎡ベースに計算し直します。特定居住用宅地等の限度面積は330㎡なので同じく面積に200/330を乗じます。貸付事業用宅地等の限度面積はもともと200㎡なのでそのままですね。
 
すべての選択特例対象宅地等の面積を200㎡ベースに置き換えた場合に、その選択特例対象宅地等の面積の合計が「200㎡」以下であることが要件です。
 
 
 
以上をカンタンにまとめると、
 
①特定事業用等宅地等と②特定居住用宅地等のみを特例対象宅地等として選択する場合は、それぞれの限度面積まで適用でき、最大730㎡(特定事業用等宅地等400㎡、特定居住用宅地等330㎡)までが対象です。
 
 
ただし①特定事業用宅地等と②特定居住用宅地等のほかに、③貸付事業用宅地等も選択する場合は、限度面積の調整計算を行うこととなっています。
 
 
以下では具体例を交えてもう少しくわしく解説していきます。
 

限度面積要件~完全併用と限定併用~

 
限度面積要件は、③貸付事業用宅地等を選択しているかどうかで適用のルールが変わってきます。
 
③貸付事業用宅地等を選択していない場合の適用ルールを「完全併用」といいます。つまり①特定事業用等宅地等と②特定居住用宅地等のみを選択した場合ですね。
 
一方で①特定事業用等宅地等あるいは②特定居住用宅地等のほかに、③貸付事業用宅地等を選択した場合の適用ルールを「限定併用」といいます。
 
以下では「完全併用」と「限定併用」を個別に具体的にお伝えします。
 
③貸付事業用宅地等を選択している場合は限定併用で、一方で選択していない場合は完全併用とお伝えしました。以下ではそれぞれ個別に解説していきます。
 

完全併用

 
完全併用は①特定事業用等宅地等と②特定居住用宅地等のみを選択した場合です。この場合は限定併用のような限度面積の調整を行いません。
 
①特定事業用等宅地等と②特定居住用宅地等の限度面積はそれぞれ別枠で、①特定事業用等宅地等は400㎡、②特定居住用宅地等は330㎡まで適用できます。
 
以下で具体例な数値で確認してきます。
 

完全併用の具体例2つ

 
具体例で選択できる宅地の面積を計算していきます。
 

具体例①

■ 前提条件
* 特定事業用等宅地等:600㎡
* 特定居住用宅地等:100㎡
 
■ 選択できる宅地の面積
* 特定事業用等宅地等:600㎡>400㎡  ∴400㎡
* 特定居住用宅地等:100㎡≦330㎡  ∴ 100㎡
 
特定事業用等宅地等と特定居住用宅地等のみを選択し、貸付事業用宅地等を選択していないため完全併用の適用です。
 
限度面積は特定事業用等宅地等と特定居住用宅地等と別枠で考えました。特定事業用等宅地等は400㎡まで、特定居住用宅地等は330㎡まで適用できます。
 
本ケースでは特定事業用等宅地等の面積600㎡が限度面積の400㎡を上回りますので、上限の400㎡までが適用範囲です。一方で特定居住用宅地等の面積100㎡は限度面積の330㎡以下ですので、100㎡のすべてを適用できます。
 
したがって特定事業用等宅地等の400㎡と特定居住用宅地等の100㎡の合計500㎡まで適用できます。
 

具体例②

■ 前提条件
* 特定事業用等宅地等:200㎡
* 特定居住用宅地等:450㎡
 
■ 選択できる宅地の面積
* 特定事業用等宅地等:200㎡≦400㎡  ∴ 200㎡
* 特定居住用宅地等:450㎡>330㎡  ∴ 330㎡
 
具体例①と同じく特定事業用等宅地等と特定居住用宅地等のみを選択しているので完全併用です。
 
本ケースでは特定事業用等宅地等の面積200㎡が限度面積400㎡以下のためすべて200㎡を小規模宅地等として選択できます。
 
一方で特定居住用宅地等の面積450㎡は限度面積の330㎡を超えていますので、限度面積の上限330㎡まで選択できます。
 
したがって特定事業用等宅地等の200㎡と特定居住用宅地等の330㎡の合計530㎡まで適用できます。
 
完全併用の計算はカンタンでしたね。次は限定併用の内容を解説します。
 

限定併用

 
限定併用は選択特例対象宅地等のに貸付事業用宅地等がある場合で、限度面積の調整計算を行います。
 
組み合わせとしては以下の3つです。
 
1. 特定事業用等宅地等と貸付事業用宅地等
2. 特定居住用宅地等と貸付事業用宅地等
3. 特定事業用等宅地等と特定居住用宅地等と貸付事業用宅地等
 
限度面積の調整計算の算式は以下の通りでしたね。
限定併用
以下では限定併用の具体例を数値で確認してきます。
 

限定併用の具体例2つ

 
限定併用の具体例2つで選択できる宅地の面積を計算していきます。
 
* 具体例①:貸付事業用宅地等と特定事業用等宅地等を選択
* 具体例②:貸付事業用宅地等と特定事業用等宅地等と特定居住用宅地等を選択
 

具体例①:貸付事業用宅地等と特定事業用等宅地等を選択

■ 前提条件
* 特定事業用等宅地等:120㎡
* 貸付事業用宅地等:150㎡
上から順に選択するものとする
 
■ 選択できる宅地の面積
* 特定事業用等宅地等:120㎡
* 貸付事業用宅地等:200㎡ー120㎡✕200㎡/400㎡=140㎡<150㎡ ∴ 140㎡
 
特定事業用等宅地等のほかに貸付事業用宅地等を選択しているので限定併用の適用です。
 
1. まず特定事業用等宅地等からの選択です。特定事業用等宅地等の面積120㎡が限度面積400㎡以下のため、すべて小規模宅地等として選択できます。
 
2. つぎに貸付事業用宅地等の選択です。以下の算式により、限定併用の場合に、調整計算上で選択できる残りの枠の面積を計算できます。
貸付事業用宅地等
本ケースに当てはめると以下の算式となります。
 
200㎡ー120㎡✕200㎡/400㎡=140㎡(残りの枠)
 
貸付事業用宅地等が150㎡であるのに対して、残りの枠は140㎡しかないので、少ない方の面積の140㎡を小規模宅地として選択できます。
 
以上から小規模宅地等として選択できる宅地の面積は、特定事業用等宅地等120㎡・貸付事業用宅地等140㎡です。
 
残りの枠を比率で考えてもわかりやすいかもしれません。
貸付事業用宅地等
1. まず特定事業用等宅地等からの選択です。
 
特定事業用等宅地等の限度面積は400㎡であり、それに対して選択している面積は120㎡です。調整計算上、30%(=120㎡/400㎡)を特定事業用等宅地等の選択で使用したと考えます。
 
2. つぎに貸付事業用宅地等に使える枠は、残り70%です。
 
貸付事業用宅地等の限度面積200㎡であり、それに対して選択できる残りの枠は70%と考えます。限度面積200㎡に70%を乗じた140㎡が選択できる貸付事業用宅地等の残りの面積です。
 
貸付事業用宅地等が150㎡であるのに対して、残りの枠は140㎡しかないので、少ない方の面積140㎡を小規模宅地として選択できます。
 

具体例②:貸付事業用宅地等と特定事業用等宅地等と特定居住用宅地等を選択

■ 前提条件
* 特定事業用等宅地等:160㎡
* 貸付事業用宅地等:100㎡
* 特定居住用宅地等:231㎡
上から順に選択するものとする
 
■ 選択できる宅地の面積
 
* 特定事業用等宅地等:160㎡
* 貸付事業用宅地等:200㎡ー160㎡✕(200㎡/400㎡)=120㎡>100㎡ ∴100㎡
* 特定居住用宅地等:330㎡ー160㎡✕(330㎡/400㎡)ー100㎡✕(330㎡/200㎡)=33㎡<231㎡ ∴33㎡
 
残りの枠を比率で考える方により解説します。
 
選択
1. まず特定事業用等宅地等からの選択です。
 
特定事業用等宅地等の限度面積は400㎡であり、それに対して選択している面積は160㎡です。調整計算上、40%(=160㎡/400㎡)を特定事業用等宅地等の選択で使用したと考えます。
 
2. つぎに貸付事業用宅地等の選択です。この時点で残りの枠は60%です。
 
貸付事業用宅地等の面積100㎡のすべて選択しても、比率は50%(=100㎡/200㎡)と残りの枠の60%を満たしません。
 
残りの枠60%のうち貸付事業用宅地等で50%を使ったので、残り10%を特定事業用等宅地等で使います。
 
3. 最後に特定事業用等宅地等です。この時点で残りの枠は10%です。
 
特定居住用宅地等の限度面積330㎡であり、それに対して選択できる残りの枠は10%ですので、330㎡に10%を乗じた33㎡が選択できる特定居住用宅地等の残りの面積です。
 
特定居住用宅地等が231㎡であるのに対して、残りの枠は33㎡しかないので、少ない方の面積33㎡を小規模宅地として選択できます。
 
したがって小規模宅地等として選択できる各宅地の面積は、特定事業用等宅地等160㎡・貸付事業用宅地等100㎡・特定居住用宅地等33㎡です。
 
 

選択特例対象宅地等が複数ある場合の有利判定

 
これまでの説明では、完全併用と限定併用の適用ルールを個々に説明してきました。また複数ある選択特例対象宅地等をどの順番で選ぶのか、あらかじめ設定していました。
 
以下では宅地の金額も考慮して、選択特例対象宅地等が複数ある場合に、どの選択特例対象宅地等を選択して、完全併用と限定併用のどちらを選ぶのが税金面で有利なのかをお伝えします。
 
選択特例対象宅地等が複数ある場合には次のステップにより、完全併用と限定併用のいずれか有利なのか選択の判定を行います。
  • ステップ①:単価あたりの減額金額の算定
  • ステップ②:完全併用と限定併用の有利判定
 

ステップ①:単価あたりの減額金額の算定

 
まず単位当りの減額金額を算定します。
 
小規模宅地等の特例は、宅地の種類ごとに選択できる面積の限度は設けられていますが、金額には限度を設けられていません。
 
同じ面積の宅地であれば金額が大きい方を選択した方が、当然、減額金額は大きくなります。ただしすべての宅地が同じ面積なわけではありませんよね。
 
そこで宅地の単位あたりの減額金額を算定して、その金額が大きいものから順に選択して、全体の減額金額が大きくなるようにします。
 
ただし選択特例対象宅地等は、種類ごとに限度面積と減額割合が異なりました。この違いも単位あたりの減額金額に反映してあげていないと、各宅地の減額金額を同じ条件により比べられません。
 
宅地の種類ごとの限度面積と減額割合の違いを単位当りの減額金額に反映させた算定式が以下のとおりです。
単位あたり減額金額
すでにお伝えしたとおり、貸付事情用宅地等を選択する場合の限度面積要件の調整計算は、貸付事業用宅地等の限度面積200㎡をベースに考えます。単位あたりの減額金額の判定もこれに合わせています。
 
単位当たりの減額金額を出すときの分子と分母は、限度面積の調整計算の分母・分子とは逆ですので注意しましょう。
 
計算式のなかで特例対象宅地等の1㎡当りの単価に乗ずる数値は、特定事業用等宅地等は3.2・特定居住用宅地等は2.64・貸付事業用宅地等は1で考えても、結果は同じですので問題ありません。
 

ステップ②:完全併用と限定併用の有利判定

 
つぎに限定併用と完全併用の有利判定を行います。
 
ステップ①の単位あたりの減額金額を踏まえて、完全併用を適用するのか、限定併用を適用するのかの有利判定を行います。
 
具体例を確認してみましょう。
 

有利判定の具体例4つ

 
以下の4つのケースお伝えします。
  • 具体例①:限定併用選択のケース
  • 具体例②:完全併用選択のケース
  • 具体例③:完全併用選択のケース
  • 具体例④:完全併用選択のケース

具体例①:限定併用選択のケース

■ 前提条件
* 長男、特定居住用宅地等、132㎡、55000千円
* 長男、貸付事業用宅地等、132㎡、50000千円
* 次男、貸付事業用宅地等、200㎡、20000千円
* 三男、特定事業用等宅地等、160㎡、40000千円
 
■ ステップ①:単位あたり減額金額
* 長男、特定居住用宅地等、(55000千円/132㎡)✕2.64=1099(順位1)
* 長男、貸付事業用宅地等、(50000千円/132㎡)✕1.00=378(順位3)
* 次男、貸付事業用宅地等、(20000千円/200㎡)✕1.00=100(順位4)
* 三男、特定事業用等宅地等、(40000千円/160㎡)✕3.20=800(順位2)
 
単位あたりの減額金額をもとに順位付けしたのが上記のとおりです。
 
■ ステップ②:限定併用と完全併用の有利判定
限定併用と完全併用
■ ①限定併用
 
まず限定併用です。
 
1. 長男が単位あたりの減額が一番大きな特定居住用宅地等132㎡を選択します。
 
特定居住用宅地等の132㎡を貸付事業用宅地等の200㎡換算すると80㎡(=132㎡/330㎡✕200㎡)です。
 
2. つぎに三男が特定事業用宅地の160㎡を選択します。
 
特定事業用宅地の160㎡を貸付事業用宅地等の200㎡換算すると80㎡(=160㎡/400㎡✕200㎡)です。
 
200㎡換算だと長男の特定居住用宅地等の80㎡と三男の特定事業用等宅地等の80㎡とで160㎡です。200㎡まで40㎡の残りがあります。
 
3. 最後に長男が貸付事業用宅地等から40㎡を選択します。貸付事業用宅地等の限度面積は200㎡ですので、200㎡の換算は考えずにそのまま残りの40㎡を選択します。
 
以下のとおり限定併用比率で考えても構いません。
 
1. まず 長男の特定居住用宅地等の限度面積330㎡に対する選択する宅地の面積132㎡の割合は40%です。
 
2. つぎに三男の特定事業用宅地の限度面積400㎡に対する選択する宅地の面積は160㎡の割合は40%です。100%までの残りの枠は20%です。
 
3. 最後に長男が貸付事業用宅地等から残りの枠の20%分を選択します。貸付事業用宅地等の限度面積200㎡に残りの枠20%を乗じた数値ですね。
 
 
■ ②完全併用
 
つぎに完全併用です。
 
完全併用では、限度面積まで特定居住用と特定事業用等宅地等をそのまま選択できます。
 
長男の特定居住用宅地等135㎡は限度面積の330㎡以下なので135㎡のすべてを選択できます。
 
また三男の特定事業用等宅地等160㎡も限度面積の400㎡以下ですのでそのまま160㎡を選択できます。
 
 
■ ③限定併用と完全併用の有利判定
 
①限定併用と②完全併用とを比較した場合、①限定併用の方が長男の貸付事業用宅地等の40㎡分を多く選択できます。
 
そのため①限定併用の方が②完全併用よりも有利となります。
 

具体例②:完全併用選択のケース

■ 前提条件
* 長男、特定居住用宅地等、165㎡、100000千円
* 次男、貸付事業用宅地等、300㎡、40000千円
* 三男、特定事業用等宅地等、200㎡、50000千円
 
■ ステップ①:単位あたり減額金額
* 長男、特定居住用宅地等、(100000千円/165㎡)✕2.64=1600(順位1)
* 次男、貸付事業用宅地等、(40000千円/300㎡)✕1.00=133(順位3)
* 三男、特定事業用等宅地等、(50000千円/200㎡)✕3.20=800(順位2)
 
単位あたりの減額金額をもとに順位付けしたのが上記のとおりです。
 
■ ステップ②:限定併用と完全併用の有利判定
限定併用と完全併用
■ ①限定併用
 
まず限定併用です。
 
1. 長男が単位あたりの減額が一番大きな特定居住用宅地等165㎡を選択します。
 
特定居住用宅地等の165㎡を貸付事業用宅地等の200㎡換算すると100㎡(=165㎡/330㎡✕200㎡)です。
 
2. つぎに三男が特定事業用等宅地等200㎡を選択します。
 
特定事業用等宅地等の200㎡を貸付事業用宅地等の200㎡換算すると100㎡(=200㎡/400㎡✕200㎡)です。
 
200㎡ベースで考えると、長男の特定居住用宅地等の100㎡と三男の特定事業用等宅地等の100㎡とで合計200㎡であり、この時点で200㎡までの残りの枠はありません。
 
貸付事業用宅地等である順位3の次男の宅地まで枠は残りません。そのため貸付事業用宅地等を選択する場合の限定併用の適用はありませんので、完全併用で考えていきます。
 
■ ②完全併用
 
完全併用で考える場合、長男の特定居住用宅地等260㎡と次男の特定事業用等宅地等280㎡は、それぞれ限度面積の330㎡、400㎡以下ですので、そのまま選択できます。
 
■ ③限定併用と完全併用の有利判定
 
本ケースの場合、順位3の貸付事業用宅地等まで枠が残りませんので、完全併用を適用します。長男の特定居住用宅地等260㎡と次男の特定事業用等宅地等280㎡を選択します。
 

具体例③:完全併用選択のケース

■ 前提条件
* 長男、特定居住用宅地等、264㎡、50000千円
* 次男、特定事業用等宅地等、280㎡、40000千円
* 三男、貸付事業用宅地等、200㎡、80000千円
 
■ ステップ①:単位あたり減額金額
* 長男、特定居住用宅地等、(50000千円/264㎡)✕2.64=500(順位1)
* 次男、特定事業用等宅地等、(40000千円/280㎡)✕3.20=457(順位2)
* 三男、貸付事業用宅地等、(80000千円/200㎡)✕1.00=400(順位3)
 
単位あたりの減額金額をもとに順位付けしたのが上記のとおりです。
 
■ ステップ②:限定併用と完全併用の有利判定
有利判定

■ ①限定併用

 

まず限定併用です。

 

1. 長男が単位あたりの減額が一番大きな特定居住用宅地等264㎡を選択します。

 

特定居住用宅地等の264㎡を貸付事業用宅地等の200㎡換算すると160㎡(=264㎡/330㎡✕200㎡)です。この時点で残りの面積は40㎡ですね。

 

2. 次男の特定事業用宅地の280㎡を貸付事業用宅地等の200㎡換算すると140㎡(=280㎡/400㎡✕200㎡)です。しかし選択できる宅地の面積は残り40㎡です。

 

したがって次男は特定事業用宅地40㎡を選択します。

 

■ ②完全併用

 

つぎに完全併用です。

 

長男と次男が選択する特定居住用宅地等264㎡と次男の特定事業用宅地の280㎡はそれぞれ限度面積以下です。

 

そのため長男は特定居住用宅地等264㎡・次男は特定事業用宅地の280㎡を選択します。

 

■ ③限定併用と完全併用の有利判定

 

順位2の次男の選択する特定事業用等宅地等が限定併用では80㎡で頭打ちであるのに対して、完全併用ではそのまま280㎡を選択できるため、完全併用が有利ですね。

 

具体例④:完全併用選択のケース

■ 前提条件

* 長男、特定事業用等宅地等、320㎡、40000千円

* 次男、特定居住用宅地等、132㎡、32000千円

* 三男、貸付事業用宅地等、100㎡、45100千円

(借地割合60%、借地権割合30%の考慮前の自用地価額55000千円)

 

■ ステップ①:単位あたり減額金額

* 長男、特定事業用等宅地等、(40000千円/320㎡)✕3.20=400(順位3)

* 次男、特定居住用宅地等、(32000千円/132㎡)✕2.64=640(順位1)

* 三男、貸付事業用宅地等、(45100千円/100㎡)✕1.00=451(順位2)

 

単位あたりの減額金額をもとに順位付けしたのが上記のとおりです。

 

■ ステップ②:限定併用と完全併用の有利判定

 
有利判定

本ケースの場合では単位あたり減額金額と面積だけでは、限定併用と完全併用のどちらが有利か判断できません。

 

上表を確認すると、完全併用だと金額単位あたりの減額金額の大きい順で1番目と3番目が選ばれます。

 

また順位3の長男の特定事業用等宅地等は、限定併用だと40㎡の選択ですが、完全併用だと320㎡です。

 

単位あたり減額金額と面積だけでは、限定併用と完全併用のどちらが有利か判断が難しいので、このようなケースでは限定併用と完全併用の減額総額を出してみて有利な方を選択します。

 

 

■ ①限定併用を選択した場合の減額金額

 

* 長男、特定事業用等宅地等、40000千円✕(40㎡/320㎡)✕80%=4000千円

* 次男、特定居住用宅地等、32000千円✕(132㎡/132㎡)✕80%=25600千円

* 三男、貸付事業用宅地等、45100千円✕(100㎡/100㎡)✕50%=22500千円

 

計 52150千円

 

■ ②完全併用を選択した場合の減額金額

 

* 長男、特定事業用等宅地等、40000千円✕(320㎡/320㎡)✕80%=32000千円

* 次男、特定居住用宅地等、32000千円(132㎡/132㎡)✕80%=25600千円

 

計 57600千円

 

■ ③限定併用と完全併用の有利判定

 

①限定併用 52150千円 <②完全併用 57600千円 

 

∴ ②完全併用 57600千円の適用が有利

 

完全併用の減額金額の方が限定併用よりも大きいので、完全併用を適用するの方が有利と判断できます。

 

■ (参考)小規模宅地等の特例を適用した後の価額

 

参考まで具体例④の小規模宅地等の特例を適用した後の各宅地の価額を載せておきます。

 

* 長男、特定事業用等宅地等、40000千円ー32000千円=8000千円

* 次男、特定居住用宅地等、32000千円ー25600千円=6400千円

* 三男、貸付事業用宅地等、45100千円

 

共有の場合の選択できる限度面積

 

被相続人と相続人が居住の用に供している建物とその敷地を共有している場合、小規模宅地等の特例が適用される面積は以下の算式によります。

 

適用面積=敷地全体の面積×被相続人の持分

 

敷地全体の面積ではなく、被相続人の持分に応じた面積であるところがポイントです。

 

たとえば被相続人と配偶者が、同居していた家屋とその敷地200㎡を1/2ずつ所有していたとします。この場合の適用面積は、敷地全体の面積200㎡ではなく、敷地全体の面積200㎡に被相続人の持分1/2を乗じた100㎡です。

 

選択特定居住用宅地等に該当する場合の限度面積は330㎡です。本ケースでは被相続人の持分の100㎡は限度面積の330㎡以下ですので、被相続人の持分の100㎡が特定居住用宅地等として選択できる限度面積となります。

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