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こんにちは世田谷相続専門税理士事務所です。
相続人のなかに障害者の長男がいるけど、相続税で有利な控除を知りたい。過去に障害者控除を使った長男がいるけど、今回の相続でも障害者控除を使えるのか知りたい。
障害者控除は、健常者よりも生活費が多くかかることなどの事情に配慮して設けられた制度です。最大で1700万円まで相続税の控除を受けられる制度であるので、インパクトが少なくないため、忘れずに使いたいものですね。
本記事では障害者控除の要件、計算方法や適用するに当たっての留意点までお伝えします。
この記事の目次
相続税の障害者控除とは、相続または遺贈により財産を取得した人が障害者の場合、算出税額から10万円(特別障害者の場合は20万円)にその人が85歳に達するまでの年数を掛けて出した金額を控除した金額により、納付すべき相続税とする制度です。
障害者は健常者よりも生活費が多くかかることなどの事情に配慮して設けられた制度です。
障害者控除は相続または遺贈により財産を取得し、つぎのすべての要件を満たす人です。
一つずつ解説します。
障害者に該当することです。
市区町村などから認定を受けた障害者であることが必要です。たとえば以下のような人です。
一般障害者:身体障害者手帳上の障害の程度が3級~6級の人、精神障害者保健福祉手帳上の障害の程度が2級または3級の人
特別障害者:身体障害者手帳上の障害の程度が1級または2級の人、精神障害者保健福祉手帳上の障害の程度が1級の人
くわしくは後述します。
居住無制限納税義務者であることです。
以下の人に障害者控除の適用はありません。
特定納税義務者も障害者控除の適用を受けられます。ただし相続開始のときに日本国内に住所を有する人に限られます。
国は日本との関わりの深い人に適用を限定したいと考えている節があります。各国で障害者と認められる人まで適用を広げてしまうと、それぞれ障害者の範囲は異なりますから、要件を満たすかどうかの判定が難しいからかもしれません。
したがって国外に住所を有する人には障害者控除の適用が受けられません。日本に住所を有していても制限納税義務者は、日本との関わりが薄いという理由からか、障害者控除の適用が認められていません。
法定相続人であることです。相続の放棄があった場合、その放棄がなかったものとした場合の相続人です。
財産を取得した者が相続を放棄したことにより相続人に該当しないこととなった場合も、法定相続人に該当すれば適用があります。遺贈により財産を取得した受遺者は、障害者控除の適用を受けられます。
85歳未満であることです。
障害者とは精神または心身に障害がある一定の人をいい、特別障害者とは、障害者のうち精神または身体に重度の障害のある一定の人をいいます。
① 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者、精神保健指定医等の判定により知的障害者と判定された者
② 精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている者(障害等級が2級または3級)
③ 身体障害者手帳に身体上の障害があると記載されている者(障害の程度が3級から6級)
④ 戦傷病者手帳の交付を受けている者
⑤ 負傷または疾病が原子爆弾の傷害作用に起因する旨の厚生労働大臣の認定を受けている者
⑥ 精神または身体に障害のある65歳以上の者で、その障害の程度につき市区町村長から一定の認定を受けている者
⑦ 常に就床を要し複雑な介護を要する者のうち、市区町村長等から一定の認定を受けている者
国税庁 基通19の4-1 一般障害者の範囲
① 一般障害者①のうち精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者、重度の知的障害者と判定された者
② 一般障害者②のうち障害等級が1級の者
③ 一般障害者③のうち障害の程度が1級または2級の者
④ 一般障害者④のうち精神上または身体上の障害の程度が特別項症から第三項症までの者
⑤ 一般障害者⑤と同じ
⑥ 一般障害者⑥のうち障害の程度が一定以上であることにつき市区町村長から認定を受けている者
⑦ 一般障害者⑦のうち障害の程度が一定以上であることにつき市区町村長から認定を受けている者
国税庁 基通19の4-2 特別障害者の範囲
障害者控除額の計算式は以下のとおりです。
具体例により確認しましょう。
長男と兄は一般障害者、二男は特別障害者です。長男と次男は被相続人の相続を放棄し、遺贈により財産を取得しています。
各相続人の障害者控除額は、以下のとおりです。
長男と二男は相続を放棄していますが、相続を放棄したことにより相続人に該当しないこととなった場合でも、法定相続人に該当すれば適用があります。長男と二男は法定相続人のため、遺贈により取得した財産に対して障害者控除を適用できます。
兄は法定相続人でないため障害者控除の適用はありません。
障害者が2回以上相続した場合、それぞれの相続で障害者控除の適用を受けられます。
障害者控除を受けられる人が、今回の相続の前にも相続や遺贈によって財産を取得したことがあり、前回の相続のときに障害者やその扶養義務者がすでに障害者控除を受けたことがある場合、今回の相続で控除できる金額は、前回の相続までの控除不足額が限度とされます。
したがって過去の相続時までに全額の控除を受けていた場合、今回の相続では控除を受けられません。
計算式は以下のとおりです。
二次相続を例に見ていきましょう。一次相続とは両親のいずれかが亡くなったときの相続です。二次相続とは一次相続で亡くなった両親とは別の親が亡くなったときの相続をいいます。
長男は父が亡くなったときの相続(一次相続)で、障害者控除額498万円(=6万円×(85歳-2歳))のうち300万円を相続税の控除(1回目の既控除額)に使用したとします。
平成25年度税制改正により2015年(平成27年)1月1日以後の相続等について、障害者控除が1年につき6万円(特別障害者12万円)から現行の10万円(特別障害者20万円)に引き上げられています。父が亡くなった1998年(平成10年)当時の一般障害者の控除額は1年につき6万円です。
今回の配偶者の相続(二次相続)での障害者控除額は、以下のとおりです。
①は原則的な方法により計算します。過去に相続があってもなくても計算方法は変わりません。
②は前回の相続が平成27年より前であっても85歳に達するまで年数1年につき10万円(20万円)で計算します。
前回の相続のときから障害の程度が重くなっていることも考えられます。障害の程度が一般障害者から特別障害者に重くなったときの計算例を確認します。
計算式は以下のとおりです。
具体例により確認しましょう。
長男は、父が亡くなったときに障害者控除額420万円(=6万円×(85歳-15歳))のうち330万円を相続税の控除(1回目の既控除額)に使用しています。
計算結果は以下のとおりです。
※15歳1月~40歳2月 25年1月 → 26年
①は原則的な方法により計算します。過去に相続があってもなくても計算方法は変わりません。
障害者の相続税額から、上の項目で計算した金額を控除しきれない(控除不足額がある)場合、その控除不足額は、その扶養義務者の相続税から控除できます。
扶養義務者から控除できる金額は以下のとおりです。
扶養義務者が1人の場合、扶養義務者の相続税から全額を控除
扶養義務者が2人以上の場合
① 扶養義務者全員の協議で控除額を定め、申告書を提出した場合、申告書に記載した金額
② ①以外の場合、以下の算式により計算した金額
扶養義務者が2人以上の場合、扶養義務者全員の協議により控除を受ける金額を定めます。協議が調わない場合、控除不足額をその扶養義務者の相続税額の比で按分します。
扶養義務者とは、以下の人をいいます。
扶養義務者には相続人の順位のような順位はありません。扶養は互いに協力して行うもので、配偶者が一番にしなければならないものではないからですね。また実際に扶養しているかどうかは問われず、扶養義務者の身分があれば控除できます。
扶養義務者全員の協議により控除を受ける金額を定めなかった場合の、各扶養義務者から控除する金額の計算例です。
二男の障害者控除額が60万円と算定され、本人の相続税30万円から控除しきれない金額(控除不足額)が30万円生じたとします。
控除不足額30万円を各扶養義務者の相続税の比で按分し、各扶養義務者から控除する金額を算定します。
障害者控除の適用を受ける場合、相続税の申告書において「第6表 未成年者控除・障害者控除額の計算書」を作成します。申告書には障害者手帳コピーなど要件を満たしている障害者であることを証明する書類を添付します。
障害者控除を適用する際の留意点をお伝えします。
財産を取得した者が相続を放棄したことにより相続人に該当しないこととなった場合も、法定相続人に該当すれば適用があります。遺贈により財産を取得した受遺者は、障害者控除の適用を受けられます。
障害者にあたるかどうかは、相続開始日で判定します。
相続開始日に障害者手帳の交付を受けていない人でも障害者控除を適用できる場合があります。つぎの項目です。
相続開始時に精神障害者保健福祉手帳、身体障害者手帳または戦傷病者手帳の手帳の交付を受けていない人でも、つぎの要件のいずれも満たす場合、一般障害者または特別障害者として障害者控除の適用を受けられます。
① 期限内申告書を提出するときに、これらの手帳の交付を受けている、または交付の申請中であること
② 医師の診断書などにより、相続開始のときに明らかにこれらの手帳に書かれる程度の障害があると認められる者であること
国税庁 基通19の4-3 障害者として取り扱うことができる者
療育(りょういく)手帳の交付を受けている人も障害者控除を適用できます。療育手帳とは、知的障害のある人に交付される手帳です。
特別障害者に当たる障害の程度が重度の場合は「A(マルA、A2)など」、一般障害者に当たる場合は「B」などと表示することとなっています。療育手帳は、「愛護手帳」、「愛の手帳」や「みどりの手帳」など各自治体によって呼び方は異なります。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1160_qa.htm
成年被後見人が障害者控除の対象となる特別障害者に当たることを国税庁が明らかにしています。したがって成年後見人は障害者控除の適用を受けられます。
成年被後見人は、家庭裁判所において「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」として後見開始の審判を受けた人です。
障害者の認定を受けていないからといって、障害者控除の適用を受けることを忘れないようにしましょう。
別紙 成年被後見人の相続税における障害者控除の適用について|国税庁
介護認定を受けただけでは障害者控除は使えません。要介護の状態の方でも市区町村に「障害者控除対象者認定書」の申請をし、障害者控除対象者として認められた場合、障害者控除の適用を受けられます。
要介護の方は、常に寝たきりで介護を受けているなど生活する上での不便は障害者と変わるところはないと考えられるからです。相続人のなかに介護を受けている方がいる場合、市区町村に問い合わせてみてみることをお勧めします。
障害者控除を使ってその障害者の相続税がゼロになった場合、その障害者の相続税の申告は不要です。ただし他に納付すべき相続税のある相続人等がいる場合、その人は相続税を申告する義務があります。
小規模宅地等の特例や配偶者控除と異なり、遺産総額が基礎控除を超えていても、障害者控除の適用により相続税がゼロとなった場合、相続税の申告義務はありません。同じ取り扱がされるものに、たとえば相次相続控除・未成年者控除・外国税額控除があります。
ただし「障害者が2回以上相続した場合、それぞれの相続で適用できる(二次相続を例に)」でお伝えしたように、過去に障害者控除の適用を受けた人が、今回の相続でも障害者控除の適用を受けようとした場合、過去の相続税から控除した金額を把握していないと控除額を計算できません。
相続税の申告義務がないからと申告しなかった場合、過去の相続税や障害者控除を把握しておくことが難しくなることがあります。その後の相続で障害者控除を適用することが想定される場合、申告するか、申告をしなくても金額を把握できるようにしておくとよいでしょう。
障害者控除は期限内申告の要件はありませんので、相続税の提出期限後の期限後申告において障害者控除を適用できます。また修正申告や更正の請求でも障害者控除を適用できます。
遺産が未分割の状態でも障害者控除を適用できます。小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減のような遺産が未分割であることによる適用の制限はありません。
配偶者が障害者の場合、配偶者の税額軽減と障害者控除を併用できます。
配偶者が配偶者の税額軽減を適用し配偶者の相続税がゼロとなる場合、配偶者の相続税から控除しなかった障害者控除額を、他の扶養義務者の相続税から控除できます。
障害者控除は、その障害者が「相続または遺贈により財産を取得する」ことが要件です。障害者が財産をまったく相続しない場合、控除の適用はありません。その障害者の相続税から控除できなくなるばかりか、控除できなかった金額を扶養義務者の相続税からも控除できません。
障害者の方が少額でも相続財産を取得すれば、障害者の相続税から控除しきれない金額を、扶養義務者の相続税からも控除できます。
障害者の方に財産を持たせるのが心配な場合は、代償分割の分割方法を使って障害者以外の相続人の維持管理が難しい不動産などの財産を相続し、障害者は管理しやすい現金を取得させる方法も考えられます。
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